「AGA治療、やめてよかった」。検索するとこの言葉、けっこう出てきます。正直、ちょっとホッとしませんか。私はしました。
私は今年40歳。AGAの治療は、まだ始めていません。カウンセリングを予約するかどうかで止まっている段階です。それでね、始める前に何を調べたかというと——「やめ方」なんですよ。
順番がおかしいと思われるかもしれない。でも、毎月お金がかかって、しかも「やめたらどうなるか」がよく分からないものに飛び込むのが怖かった。だから先に、やめるときのことを調べました。そこで分かったことが、けっこう身も蓋もなかったので書きます。
「やめてよかった」の正体は、たぶん“効いていなかった”
体験談を並べて読んでいくと、「やめてよかった」と言っている人には共通点があります。効果を実感できていなかったか、体のほうに問題が出ていたか。どちらかなんです。
つまり、やめて良くなったのではなく、続ける理由がなくなった。こっちのほうが近い。
ここ、大事なので言い換えますね。「やめる」が正解になるのは、続けても得るものが薄いと分かったときだけです。効いている人がやめて良かった、という話ではない。
じゃあ「続ける理由がなくなった」って、どう判定するのか。ここからが本題です。
やめてよかった人に共通する3つの条件
条件1:決められた期間、ちゃんと続けたうえで変化がなかった
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」には、フィナステリド内服について「少なくとも6カ月程度は内服を継続し効果を確認すべきである」と書かれています(2026年9月5日確認)。
塗り薬も同じです。リアップX5の製品説明書には「効果がわかるようになるまで少なくとも4ヵ月間、毎日使用してください」「本剤の有効性は4ヵ月使用後から認められています」とあり、さらに「6ヵ月間使用して、次のいずれにおいても改善が認められない場合は、使用を中止し、この説明書を持って医師又は薬剤師に相談してください」と続きます(大正製薬の製品説明書/2026年9月5日確認)。
3ヶ月でやめた人は、そもそも効果を判定できる期間に達していません。厳しい言い方ですが、これは効かなかったのではなく、判定していないだけです。
条件2:副作用が出た
これは我慢比べの話ではないです。ガイドラインが引く国内の試験(120例・52週間)では、デュタステリドでリビドー減少8.3%、インポテンツ11.7%、射精障害5.0%という数字が出ています。同じ薬でも国際試験ではリビドー減少3.3%、インポテンツ5.4%と、ぐっと低い。
数字にこれだけ差があること自体、知っておくべき点だと思いました。ガイドラインも「性機能障害を含めた副作用についても十分な説明と同意が必要である」と書いています。出たなら、根性で続けるところではなく、医師に相談して変えるかやめるかを決めるところです。
条件3:そもそもAGAではなかった
これは完全に盲点でした。リアップX5の説明書には「本剤は壮年性脱毛症でのみ有効です」と書かれていて、「脱毛が急激であったり、髪が斑状に抜けている人」は使わないよう注意されています。円形脱毛症や甲状腺の病気による脱毛は、まったく別の話。原因が違うなら、効かないのは当たり前です。
さて。3つのどれにも当てはまらない人へ。次の話は、けっこう厳しいです。
効いている人がやめると、たぶん戻ります
ここは盛らずにそのまま書きます。
さきほどのガイドラインのフィナステリドの項は、こう締められています。「なお,内服を中止すると効果は消失する.」——それだけ。一文です。あまりに短くて、逆に迫力がありました。
塗り薬も同じ構造でした。リアップX5の説明書には「効果を維持するには継続して使用することが必要で、使用を中止すると徐々に元に戻ります」、そして「本剤は壮年性脱毛症の原因を取り除くものではありません」とあります。原因をなくしているのではなく、抑えているだけ。やめれば戻る仕組みなんですね。
ついでにもうひとつ。デュタステリドについては、ガイドラインに「1年を超える長期投与での効果や投与中止後の毛髪量変化については検討されていない」と書かれています。やめたあとどうなるかのデータそのものが少ない、ということです。ここは「分かっていない」と正直に言うのが誠実だと思います。
何ヶ月で元に戻るのかを断言している一次情報は、私が調べた範囲では見つかりませんでした。効果にも戻り方にも個人差があります。気になる場合は自己判断でやめず、処方している医師に相談してください。
やめる前に、これだけはやっておく
- 写真を撮る。鏡と記憶はまったく当てになりません。同じ場所・同じ照明・同じ角度で、つむじと生え際。判断材料はこれしかないと思ったほうがいいです。
- 自分だけで決めない。「効いていない」のか「まだ判定の途中」なのかは、素人には切り分けられません。やめると決めた時点でも、一度は医師に言う。
- 健康診断でPSAを測る予定があるなら、必ず服用を申告する。ガイドラインは、フィナステリド投与中は血清PSA濃度が約50%低下するため「2倍した値を目安として評価すべきである」としています(デュタステリドも同様)。
最後のPSAは、前立腺がんの見落としに直結する話です。地味ですが、ここだけは覚えて帰ってください。
そしてもうひとつ、地味なわりに効くのがこれ。判断の条件をそろえることです。
判断を邪魔する「フケとかゆみ」は、先に消しておく
抜け毛が増えた気がする、頭皮が赤い、かゆい。これが薬のせいなのか、シャンプーが合っていないだけなのか、素人には切り分けられません。切り分けられないまま「合わないからやめる」と決めてしまうのは、もったいないですよね。
なので私は、始めるタイミングで使うシャンプーを先に決めておくつもりです。候補にしているのが第一三共ヘルスケアの「ミノン 薬用ヘアシャンプー 450mL」。敏感肌・乾燥肌向けに植物性アミノ酸系の洗浄成分を使った医薬部外品で、頭皮のフケ・かゆみを防ぐ、という位置づけの製品です。強い洗浄剤でガシガシ洗うタイプではないので、頭皮を余計に荒らしにくい。乾燥しやすい人、洗ったあとに突っ張る人には合わせやすいと思います。
念のため書いておきますが、これは治療薬の代わりにはなりません。シャンプーで薄毛が治ることはないです。あくまで「薬が効いているかどうかを見やすくするために、頭皮トラブルを減らす道具」。逆に、頭皮に湿疹や強い炎症が出ているなら、シャンプーを替える前に皮膚科へ行ってください。
私なら、始める前に「やめる条件」を決めておく
まだ始めていない私が言えるのは、結局これだけです。やめる基準は、迷っていない今のうちに決めておいたほうがいい。
- 6ヶ月は続ける。それまでは判定しない
- 副作用が出たらすぐ医師に連絡する。我慢しない
- 6ヶ月後に写真を並べて変化がゼロなら、まず「やめる」ではなく「変える」を相談する
- 続けられる金額で始める
最後の金額だけ補足します。イースト駅前クリニックの公式料金ページでは、フィナステリド(プロペシアジェネリック)1ヶ月分28錠が3,740円、デュタステリド30錠が6,930円、ミノキシジル外用5%が1本5,500円(いずれも税込/2026年9月5日確認)。初診費用は0円と書かれていますが、診察後に薬を購入しない場合は診察料3,300円がかかる場合がある、との記載もありました。
これはまだ始めていない人間の、机の上の計画です。実際に始めたら書き直すことになると思います。ただ、「やめてよかった」という記事を読んで安心する前に、自分が3つの条件のどれに当てはまるのかだけは確かめてほしい。どれにも当てはまらないなら、やめるのはたぶん、まだ早いです。